企業における障がい者雇用が義務化されたのは1976年、当初は法定雇用率1.5%でスタートしました。それが今や2.5%まで引き上げられ、2026年7月の2.7%が目前に迫っています。
法定雇用率の引き上げに伴い、企業の採用ニーズは年々高まり、企業で働く障がい者の人数は毎年過去最高を更新している状況です。
しかし、採用ニーズの高まりとともに、採用面や障がい者が行う業務の切り出しや創出、定着のためのフォロー体制など、企業として考慮しないといけない課題が増えるもの実情です。
そこで今回は、障がい者の採用から定着を実現するための一つの選択肢として、弊社の障がい者雇用支援事業でも連携している「就労移行支援事業所」の活用についてご紹介したいと思います。

就労移行支援事業とは、障害者総合支援法に定められた障がい者福祉サービスのひとつです。障がいのある方に、働くために必要な知識やスキルを身に付けるためのトレーニングを行い、就職後も職場に定着するための様々なサポートを行います。
そのサービスを提供する場所が「就労移行支援事業所」です。トレーニング内容は、就業するための基礎体力、PCや軽作業スキルの習得、ビジネスマナーやコミュニケーションなどの対人スキル向上、自己理解、さらに職場体験や企業実習など多岐にわたります。
就労移行支援事業所によっては特徴的なものもあり、例えば事業所を一つの企業と想定し、模擬部署として利用者がグループに分かれ、部署内の業務の遂行、他部署との連携、外部との電話やメールのやり取りなど、実際の会社さながらのトレーニングを行っているところもあります。
また他の支援機関と連携して、体調管理や生活習慣、金銭管理などの生活面などのサポートも行っています。
一見障がい者の訓練施設のような印象を持ちますが、障がい者の就職と職場定着という目的の元、企業に対しても様々な支援やアドバイスを行っている事業所が多くあります。

企業にとって障がい者を採用する際にどの部署でどのような業務を行ってもらうのかということは、大きな課題です。
採用する障がい者の担当業務を考えるにあたっては、
・どのレベルの業務を行ってくれる?
・電話応対は大丈夫?
・精神的な負荷は?
・座席の配置は?
など、考慮するべきポイントが多く、実際に頭を悩ませている人事ご担当者も多いのではないでしょうか。障がい者の募集の際には、このような点をある程度社内で整理した上で求人を出す必要があります。
一方、就労移行支援事業所を活用する場合、まずは「障がい者を採用したい」という相談からスタートとなります。障がい者向けに切り出すことができる業務や必要スキル、求める人材像、社内環境などのヒアリングやアドバイスを行ってくれます。
同様のサポートを行っている支援機関は他にもありますが、大きく違っている点は担当者が採用の候補者となる「就職を目指して訓練している利用者」のイメージを持っているということだと思います。利用者の特性や適性を踏まえた上で上で、企業側に合う人材の提案や業務のマッチングができるのが強みです。

ある程度業務や環境が定まったら、次は「職場体験・企業実習」のステップとなります。「職場体験・企業実習」は、採用の候補者となる障がい者が、企業に出勤して一定期間採用後の環境下で実際の担当業務に従事します。
この「職場体験・企業実習」では、障がい者の業務の適性を見るというのが一番の目的にはなりますが、それ以外にも様々な効果が期待できます。例えば切り出した業務の量や内容や配慮事項、配属部署内でのコミュニケーションやフォロー体制など、入社前に確認し調整することができます。
また期間中は担当者がこまめに企業・障がい者双方に聞き取りを行い、就業にあたっての課題の抽出やその解決策のアドバイスを行っていきます。特に対障がい者については、モチベーションの維持や精神的負荷の軽減など、就業継続のための様々なアプローチを行うとともに、例えば本人がわかりやすい業務マニュアル・手順書の作成など、採用後にスムーズに業務を行うための支援も行います。
職場体験・企業実習の後はいよいよ「面接」のステップとなります。面接にあたっては、多くの障がい者はかなりの緊張状態で臨むことになります。そのため人事ご担当者も質問の内容や聞き方などかなり気を遣う場面になるのではないでしょうか。
就労移行支援事業所の利用者の面接には、基本的に担当者が面接に同席し、企業と障がい者の間に入り、スムーズに質疑が行えるようサポートします。また採用決定後の必要書類の準備や記入の支援、入社初日の同行など企業・障がい者双方の不安を解消してくれます。
入社後は、アフターフォローとして6か月間定期的な職場訪問と面談、必要に応じた追加のトレーニングなどを実施して職場定着のための支援を行います。さらに、障がい者本人の希望に応じて、定着支援として3年間の継続が可能です。
そのため障がい者の方はトータルで入社後3年6か月は支援機関のサポートを受けながら安心して就業就業することができ、職場定着の可能性が格段に高まります。
就労移行支援事業所を活用した障がい者雇用の実施について紹介いたしました。障がい者雇用については、今回ご紹介した就労移行支援事業所以外にも、行政・民間を含め様々な支援やサービスがございます。
こういった機関を活用することが、定められた人数を安定的に雇用し、障がい者が定着する職場環境を整えるためのポイントになると思います。まずは相談することから始めてはいかがでしょうか。
クリエアナブキでも障がい者雇用支援事業として、サテライトオフィスサービスや障がい者の支援機関と連携した人材紹介などを行っています。
ぜひこちらからお気軽にご相談ください。
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