現在、民間企業には、常時雇用する従業員のうち2.5%の障がい者を雇用することが義務付けられています。厚生労働省では、毎年6月1日時点の障がい者雇用状況報告を企業に求めており、年末にその集計結果が発表されます。
近年、日本の障がい者雇用は確実に前進していますが、法定雇用率を満たしていない企業は依然として全体の約半数ほど存在しており、その難しさが浮き彫りとなっています。
本コラムでは、厚生労働省が発表した令和6年の障害者雇用状況の集計結果※をもとに、障がい者雇用の現状と、企業が直面する課題を考察したいと思います。
※厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001357856.pdf 2025年4月1日
令和6年調査結果のポイントは下記のとおりです。
・雇用障がい者数、実雇用率ともに過去最高を更新し、雇用障害者数は67万7,461.5人(対前年3万5,283.5人(5.5%)増加)
・実雇用率は2.41%で、対前年0.08ポイント上昇
・法定雇用率達成企業の割合は46.0%となり、対前年4.1ポイント低下
図1:令和6年6月1日現在における障害者の雇用状況
出典:「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001357856.pdf)(参照 2025-04-01)
全国的に障がい者雇用は増加傾向にあり、21年連続で過去最高を更新しています。特に近年では精神障がい者の雇用が顕著に伸びており、令和6年の調査でも前年比15.7%の増加となりました。企業の障がい者雇用への意識・取り組みの向上や、テクノロジーの発展により、多様な働き方が実現しつつあることを示していると考えられます。
しかし、雇用総数が増えている一方で法定雇用率を満たしていない企業は約54%、前年より低下しました。これは、令和6年より法定雇用率が2.3%から2.5%に上がったことによる影響が大きいものと思われます。
・令和6年より、常用労働者数40~43.5人の企業も報告対象に追加
・民間企業に雇用されている障がい者の数と実雇用率は、すべての企業規模で前年より増加
・法定雇用率達成企業の割合は、すべての企業規模で前年より低下
企業規模に比例して実雇用率が増加する傾向にあります。とくに常用労働者数が1,000人以上の企業では実雇用率が2.64%と、法定雇用率を上回っています。
法定雇用率達成企業の割合は、常用労働者数1,000人以上企業で54.7%と一番高いものの、300~500人企業では41.1%、100~300人企業は49.1%など、ばらつきがみられました。
・全国の法定雇用率未達成企業のうち、不足数が0.5人または1人である企業が64.1%
・未達成企業に占める障がい者を1人も雇用していない企業の割合は57.6%
・障害者雇用雇入れ計画を実施中の企業は502社(令和5年度)
障がい者雇用率が低い企業に対しては、この6月1日の報告に基づき、障がい者雇用達成指導が行われます。まずは2年間の雇入れ計画の作成命令の後、計画の実施状況が悪い企業に対する勧告、社名公表を前提とした特別指導へと続きます。
令和5年実績では、計画作成命令発出が219社、適性実施勧告63社、特別指導実施33社という結果でした。

法定雇用率は、令和6年4月に2.3%から2.5%に引き上げられたのに続き、令和8年7月にはさらに2.7%となることが決定しています。また、この令和7年4月からは除外率の引き下げも実施されています。
調査結果でも報告されているとおり、民間企業で働く障がい者の数は右肩上がりで推移しています。とくに精神障がいの方の雇用が増えていることからも、企業での採用枠の増加とともに、大人になってから発達障がいがわかって手帳申請するなど、新たに精神障がい者手帳を取得する人も増えると予想されます。
図2:民間企業における障害者の雇用状況
出典:「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001357856.pdf)(参照 2025-04-01)
また、国の施策として、障がい者福祉サービスから、障がい者雇用に向けてシフトしてきており、実際に福祉サービス利用者が一般就労に移行する数も増えています。
これらを総合すると、今後もさらに企業の取り組みが求められ、法定雇用率は上昇していくことが考えられます。
さらに着目すべきは、国が定める「第5次障害者基本計画」では、民間企業における障がい者雇用の目標として、2027(令和9)年度の法定雇用率達成割合56%を掲げている点です。
先述通り、令和6年の法定雇用率達成企業の割合は46.0%であることから考えると相当高い目標といえます。第4次障害者基本計画までは、雇用人数の目標が設定されていたところ、今回第5次では達成企業割合に目標が変わっていることからも、民間企業の取り組みへの期待が高まっていると考えられます。
法定雇用率が上昇すると、達成割合が低下するのが通例であるため、さらにそのハードルはあがりそうです。企業には今後、よりスピーディな雇用促進が要請されてくると予想されます。

雇用状況報告から見る現状と、国が掲げる目標や施策から考えると、今後さらに社会全体で障がい者雇用を促進していく必要性を感じます。企業規模や業種を問わず、これまでの障がい者雇用のかたちにとらわれない、新たな仕事内容・採用方法を取り入れていく必要がありそうです。
従来の障がい者雇用のイメージは、事務サポートや清掃、軽作業といった業務に限定されていましたが、最近では、障がいを持ち何らかの配慮を必要としつつも、スキル・能力を持つ人材も増えてきています。
人的資本経営、ダイバーシティ推進の観点からも、新たな戦力として障がい者雇用を考え、仕事内容や採用方法の改革を進めることが、企業にとっても新たな価値を生むチャンスになるかもしれません。
弊社では、障がい者雇用をはじめ、あらゆる人的課題に対応しています。お悩みやお困りごとは、こちらからお気軽にお問合せください。
営業時間:平日9:00~18:00
クリエアナブキ 障がい者雇用支援グループ マネージャー
北海道出身。学生時代から東京で過ごす。クリエアナブキ入社後、東京・大阪で人材サービスを長く経験。現在は、香川県在住。広島カープファン。 【主な資格】 2級キャリア・コンサルティング技能士 中小企業診断士